【火災保険】類焼損害補償特約は失火法があっても必要?
- 2020.04.01
- 火災保険
『隣家からのもらい火で類焼しても賠償ナシ!?|火災保険の必要性を解説』で解説しましたが、日本には失火法があるため、火事を起こして隣家を類焼させても重大な過失がない限り、隣家に対して賠償する責任は発生しません。
しかし、火災保険には隣家へ類焼した場合の損害を補償する「類焼損害補償特約(るいしょうそんがいほしょうとくやく)」があります。
失火法があっても火災保険に「類焼損害補償特約」をセットすべきなのでしょうか?
1.類焼損害補償特約とは?
類焼損害補償特約とは、火災保険を契約している建物・家財からの出火により、近隣の住宅や家財(家具・衣類・家電など)が類焼した場合に、法律上の賠償責任が生じなくても、近隣の住宅や家財の修復費用を補償する特約です。
類焼した近隣の住宅や家財の損害に対して新価(再調達価額)で保険金が支払われます。
保険期間中1憶円が補償の限度となります。
新価(再調達価額)とは?
新価(再調達価額)とは、保険の対象(建物・家財)と同一の構造、質、用途、規模、能力のものを再築または再取得するのに必要な金額をいいます。
なお、出火の原因が重大な過失(重過失)の場合、隣家に対して法律上の賠償責任が発生します。法律上の賠償責任が発生する場合には、「個人賠償責任保険(特約)」で補償されます。
火事の原因が「重大な過失(重過失)」とみなされたケース
- 天ぷら油を火にかけたまま、その場を離れ、火災を発生させた
- 寝タバコにより火災を発生させた
- 石油ストーブを消さずに給油。石油がこぼれて引火し、火災を発生させた
2.類焼損害補償特約の注意点
類焼損害補償特約から支払われる保険金は、損害に対して保険金を支払うべき他の保険契約等がある場合、その支払額を差し引いて支払われます。
つまり、類焼したご近所の方が火災保険に加入している場合には、その火災保険から支払われる保険金を差し引いた額が、類焼損害補償特約から保険金として支払われることになります。
ご近所の方が加入している火災保険で損害が全て補償される場合は、類焼損害補償特約からの保険金支払いはないということになります。
逆に類焼したご近所の方が火災保険に加入していなかった場合、1憶円を限度に損害額(新価)の全額が、類焼損害補償特約から支払われることになります。
3.類焼損害補償特約と失火見舞費用保険金の違いとは?
火災保険には、「類焼損害補償特約」と似た「失火見舞費用保険金」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか?
失火見舞費用保険金とは、火災保険の対象となる建物から火災、破裂・爆発が発生し、第三者の所有物に損害が発生した場合、損害が生じた世帯1つにつき20万円、1回の事故につき、保険金額の20%程度を限度に保険金を支払います。
保険金としては20万円程度なので、失火見舞費用保険金は類焼損害補償特約と違って、ご近所へのお詫び程度にしかなりません。
なお、類焼損害補償特約はオプション扱いですが、失火見舞費用保険金は多くの火災保険に自動セットされています。
4.類焼損害補償特約の必要性とは?
類焼損害補償特約は、セット必須の特約ではありませんが、特約保険料も年間2,000円程度と高くないので、セットする価値のある特約といえるでしょう。
ご近所の方の火災保険が時価契約の場合、支払われる保険金も時価額※が限度になるので、保険金の受取額が実際の損害額に対して不足する可能性があります。
類焼損害特約は新価(再調達価額)基準で保険金が支払われるので、その不足を補うことができます。
また、建物のみを対象とした火災保険に加入している方も多いのが現状です。
そのような場合、家財の損害は、その方の火災保険では補償されませんので、類焼損害補償特約が役立ちます。
※時価とは?
時価とは、保険の対象(建物や家財)の新価から使用による消耗および経過年数などに応じた減価額を控除した金額をいいます。
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