隣家からのもらい火で類焼しても賠償ナシ!?|火災保険の必要性を解説
- 2020.03.16
- 火災保険
となりの家から火事が起こり、自宅に類焼した場合でも、となりの方から賠償してもらえないと聞いたことはないでしょうか?
本当に、となりの家を燃やしてしまっても賠償する義務はないのでしょうか?
また、自分は火事を起こすことはないから火災保険には加入しないという方もいますが、それは正しい考え方なのでしょうか?
今回の記事では、火災保険の必要性について解説します。
1.隣家からの類焼で自宅が燃えても失火責任法(失火法)があり、賠償してもらえない
ご存じの方も多いと思いますが、日本では、隣家からの火事で自宅が燃えて損害が発生しても原則、隣家から賠償してもらうことはできません。
日本には失火責任法(失火法)という法律があり、火事を起こして隣家を燃やしてしまっても「重大な過失」がない場合、隣家の損害を賠償する責任はないことになっています。
民法第709条では、故意または過失によって、他人にケガをさせたり、他人の物を壊した場合、損害を賠償する責任が発生すると規定されています。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
しかし、「失火の責任に関する法律」には下記の条文があり、火事を起こして隣家に類焼しても重大な過失がない限り、民法第709条の規定は適用せず、隣家の損害を賠償する義務はないとされています。
失火責任法(失火法)の「重過失」とは?
失火責任法(失火法)があっても「重大な過失(重過失)」があれば、火元の方は賠償する義務が発生します。
「重大な過失(重過失)」とは、どのような場合が該当するのでしょうか?
過去の判例は、下記のような事例を「重大な過失(重過失)」とみなしています。
火事の原因が「重大な過失(重過失)」とみなされたケース
- 天ぷら油を火にかけたまま、その場を離れ、火災を発生させた
- 寝タバコにより火災を発生させた
- 石油ストーブを消さずに給油。石油がこぼれて引火し、火災を発生させた
上記のような「重大な過失(重過失)」とみなされることが原因で火災を起こし、隣家まで類焼してしまった場合には、隣家の損害を賠償する責任が発生します。
2.賃貸マンション・アパートで火災を発生させても失火責任法(失火法)で賠償する必要はない?
賃貸マンションやアパートに住んでいる場合には注意が必要です。
賃貸マンションやアパートで火火災を起こし、隣家を類焼させてしまった場合、失火責任法(失火法)によって重大な過失がない限り、損害を賠償する必要はありません。
しかし、大家さん(オーナー)に対して賠償する責任を逃れることはできません。
一般的に賃貸借契約では借主(部屋を借りている人)に原状回復義務が課せられています。
火災を起こし、借りた時の状態で部屋を返せない場合、債務不履行(民法第415条)となり、賠償する義務が発生します。
失火責任法(失火法)では重過失がなければ、民法第709条の適用はありません。しかし、民法第415条には失火法の適用はありません。
上記のような部屋の貸主(オーナー)への賠償責任を補償するのが、「借家人賠償責任補償特約」です。この特約は原則、単独では契約できず、火災保険にセットすることができます。
賃貸住宅の場合、家財(家電や家具、衣類など)は大して持っていないから火災保険に加入しないという方もいますが、オーナーへの賠償責任を考慮して、火災保険に加入し、「借家人賠償責任補償特約」をセットする方が安心です。
結論:日本では火災保険への加入が必須
日本では失火責任法(失火法)があるので、火災保険の加入は必須であるという結論に達します。
隣家から出火し、もらい火で自宅に類焼しても、原則賠償してもらえません。ご自身では火事は起こさないという方でも、隣家からのもらい火や放火は防ぐことはできません。
また、賃貸マンションや賃貸アパートに住んでいる場合も、大家さん(オーナー)への賠償責任を考慮して、火災保険に加入し、「借家人賠償責任補償特約」をセットする方が安心です。
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